ツールプリセットとは 2
1のように機内で測定しておりますと、そのあとに暖機運転を行わなければならず、段取りに時間がかかり過ぎだと、お叱りを受けるようになりました。(実際に工場長などが測定すると1本あたり2~3分で測定されておられており、その点で怒られもしましたが、お給料は3倍以上違いましたので、実際には私の方がコストパフォーマンスは優れている!!と心のなかでは叫んでおりました)
そこで機外測定(外段取り)をしようという話が私の居ないところで決まりました。メカニカルツールプリセッターという機器を用いて加工機械外で測定を行いますので加工や暖気運転時間等に影響を与えません。更に工具径まで測定できるということで「今度は径方向の補正も出来る」とみんな(結果的に私以外)は大喜びでした。確か70万円程度であったと記憶しております。そして下記の写真のようなメカニカルツールプリセッターが突然導入されました。(納品されるまで知りませんでした。当時のモデルは廃盤となってしまっておりますので似たモデルを載せております)
Z軸とX軸にスケールが貼られており、先端にダイアルゲージが設置してあり、スケールの値とダイアルゲージの値を加減算(勿論、手計算で)して工具長と工具径を出すというとても画期的(???)な機器でした。例えば工具長を測定する場合はZ軸を大凡の位置まで手動で動かし、ダイアルゲージの接触子を先端に当てて数値を読み、Z軸スケールの値と取り足し引きして工具長を算出させます。(計算間違いの機会が増えました)しかも工具によって頂点となる部分が異なりますから、合わせるのも一苦労です。
工具長だけでも大変なのに、今回から工具径まで測定するというお仕事までが増えました。工具長はまだ良いのですが、径の場合、最大径になる部分に工具を回転させて合わせなければならず、しかも工具によって最大径になる部分は異なりますので、工具を手動で回転させながらX軸だけでなくZ軸も動かしながら最大値になる部分を探さなければなりません。なんということでしょう~会社の人は技術革新だと喜んでおられましたが、タッチセンサーの時より工数が大幅にアップ(決して向上ではない)致しました。
1本測るのに慣れてきても7~8分(これでも誰が測るよりも速くなりました)更に、当時、マシニングセンターの数が2台から3台に増え、しかも新しい機械はBTチャックからHSKになっておりツールプリセッターのツーリング固定治具も都度交換しなければならず、また、チャックが汚れていると(切子や油です)測定結果に誤差が発生するため毎回洗浄しなければならないという誰も聞いてくれないお仕事までが増えました。
↑BTチャック
↑HSKチャック
↑BT用洗浄用治具(この他にHSK用もございます)
にも関わらず、時間がかかり過ぎだと叱られ、ATC12本×2台だった本数がHSKチャックの機械はATCが16本だったため最大で、40本の測定がいつのまにか私専任の仕事になっていました。就業時間中(当時は8:00~17:00)での作業は、「お金にならない作業よりも物を作れ」と却下されたため、仕方なく残業時間に一人寂しく電気が自分の周り以外消された現場で測定しておりました。
それでも測定している時は、静的、当然ながら主軸につけているわけではないですし、1(初級編)で使用したタッチセンサーも主軸は止めて居りますので、実際に加工する際には主軸が伸びてしまい実質的な工具長は変わってしまうため、今考えますと目安程度でしか無かったですね。段差や誤差が出るたび測り方が悪いと怒られました。思い出しますと理不尽です。
振り返り少しだけ工数計算してみたいと思います。(今更ですが)当時のお給料は20万円(基本給)程度で月に24日程度働いておりましたので日給は8,330円程度、8時間稼働でしたので時間給は1,040円になります。(実際は残業時間に行っておりましたので、もう少しだけ高いとは思いますが)一方で7分に1本測定するとしますと、1,040円÷60分×7分ですから1本あたり測定するのにかかる労務費は121円です。
これを毎日40本×24日×12ヶ月では、年間で1,393,920円かけている計算になります。(実際は残業手当は1.2倍でしたので、この作業だけで1,670,000円のお手当が支給されたわけで逆に考えますと私の年収の1/3以上がこの作業で頂けたのですが)
今なら、工数を計算して上司に直訴していると思いますが、当時は何も考えていなかったのも有りますが、残業手当が魅力的でしたので「そんなもんだ」と納得して居りました。