オーステナイト系 オーステナイト
フェライト系
フェライト系 マルテンサイト系 析出硬化系

ステンレスというと一般的に錆びない金属というイメージが定着しておりますが、実は錆びないステンレス というのは、オーステナイト系のステンレスで他のステンレスは、鉄と同じように錆びます。またオーステナイト系のステンレス でも錆びないのではなく、精錬された瞬間に表面に薄い酸化皮膜を形成することで内部まで錆びを成長させない特性を持っている に過ぎません。そういえば、学生時代にある学生が、ステンレスという原子があると思い込んでいたと教授が笑っていたことがあり ます。ステンレスは、みな合金です。特性を下に書き出しますので参考にして下さい。


鋼種 性質と用途
SUS201 Ni節約鋼種、301の代替鋼、冷間加工により磁性を持つ。鉄道車両
SUS202 Ni節約鋼種、302の代替鋼、料理道具
SUS301 冷間加工により高強度を得られる。鉄道車両、ベルトコンベヤ、ボルト、ナット、ばね
SUS301J1 304よりストレッチ加工及び曲げ加工性に優れ、加工硬化は、304と301の中間、ばね、厨房用品、建築、車両
SUS302 冷間加工により高強度を得られるが、伸びは301よりやや劣る。建築物外装材
SUS302B 302より耐酸化性が優れ、900℃以下では、310Sと同等の耐酸化性と強度を有する。自動車排ガス浄化装置、工業炉等高温装置材料
SUS303 被削性、耐焼付性向上。自動盤用として最適。ボルト、ナット
SUS303Se 被削性、耐焼付性向上。自動盤用として最適。リベット、ねじ
SUS304 ステンレス鋼、耐熱鋼として最も広く使用される。食品設備、一般化学設備、原子力用
SUS304L 304の極低炭素鋼、耐粒界腐食性に優れ、溶接後熱処理できない部品類
SUS304N1 304にNを添加し、延性の低下を抑えながら強度を高め、材料の厚さ減少の効果が有る。構造用強度部材
SUS304N2 304にN、及びNbを添加し、延性の低下を抑えながら強度を高め、材料の厚さ減少の効果が有る。構造用強度部材
SUS304LN 304LにNを添加し、延性の低下を抑えながら強度を高め、材料の厚さ減少の効果が有る。構造用強度部材
SUS305 304に比べ、加工硬化性が低い。へら絞り、特殊引抜き、冷間圧造用
SUS305J1 305の低炭素鋼で加工硬化性が低い。305と用途は同じ
SUS309S 耐食性が304より優れているが、実際は耐熱鋼として使われる事が多い。
SUS310S 耐酸化性が309Sより優れており、実際は耐熱鋼として使われる事が多い。
SUS316 海水をはじめ各種媒質に304より優れた耐食性がある。耐孔食材料
SUS316L 316の極低炭素鋼、316の性質に耐粒界腐食性を持たせたもの。
SUS316N 316にNを添加し、延性の低下を抑えながら強度を高め材料の厚さ減少の効果が有る。耐食性の優れた強度部材
SUS316LN 316LにNを添加し、同上の特性を持たせた。用途は316Nに準ずるが、耐粒界腐食性に優れる。
SUS316J1 耐食性、耐孔食性が316より優れている。耐硫酸用材料
SUS316J1L 316J1の低炭素鋼、316J1に耐粒界腐食性を持たせたもの。
SUS317 耐孔食性が316より優れている。染色設備材料等
SUS317L 317の低炭素鋼、317に耐粒界腐食性を持たせたもの。
SUS317J1 塩素イオンを含む液を取り扱う熱交換器、酢酸プラント、りん酸プラント、漂白装置など316L、317Lが耐えない環境用。
SUS321 Tiを添加し耐粒界腐食性を高めたもの。装飾部品には推奨できない。
SUS347 Nbを含み耐粒界腐食性を高めたもの。
SUS384 305より加工硬化度が低く、厳しい冷間圧造、冷間成形品用材
SUSXM7 304にCuを添加して冷間加工性の向上を図った鋼種。冷間圧造用
SUSXM15J1 304のNiを増し、Siを添加し耐応力腐食割れ性を向上。塩素イオンを含む環境用
SUS329J1 2相組織を持ち耐酸性、耐孔食性に優れ、かつ高強度を持つ。耐海水用等
SUS329J2L 高濃度塩化物、海水などの環境に対する耐食性に優れ、強度などの特性はSUS329J1と同等以上
SUS405 高温からの冷却で著しい硬化を生じない。タービン材、焼入れ用部品、クラッド材
SUS410L 410SよりCを低くし、溶接曲げ性、加工性、耐高温酸化性に優れる。自動車排ガス処理装置、ボイラ燃焼室、バーナーなど
SUS429 430の溶接性改良鋼種。
SUS430 耐食性の優れた汎用鋼種。建築内装用、オイルバーナー部品、家庭用器具、家電部品
SUS430F 430に被削性を与えたもの。自動盤用、ボルト、ナット類
SUS430LX 430にTiまたはNbを添加、Cを低下し、加工性、溶接性改良、温水タンク、給湯用、衛生器具、家庭用耐久機器、自転車リム
SUS434 430の改良鋼の一種、430より塩分に対して強く、自動車外装用として使用される。
SUS436L 434のCとNを低下し、Ti、Nbまたは、Zrを単独または、複合添加し、加工性、溶接性をよくした。建築内外装、車両部品、厨房器具、給湯、給水器具
SUS444 436LよりMoを多くし、更に耐食性を高めた。温水タンク、貯水槽、太陽熱温水器、熱交換器、食品機器、染色機械など、耐応力、腐食割れ用
SUS447J1 高Cr-Moで、C、Nを極度に低下し耐食性に優れる。酢酸、乳酸などの有機酸関係プラント、苛性ソーダ製造プラント、ハロゲンイオンによる耐応力腐食割れ性、耐孔食性用途、公害防止機器
SUSXM27 447J1に類似の性質、用途、耐食性と軟磁性の両方が必要とされる用途
SUS403 タービンブレード及び高応力部品として良好なステンレス鋼。耐熱鋼
SUS410 良好な耐食性、機械加工性を持つ。一般用途用、刃物類
SUS410S 410の耐食性、成形性を向上させた鋼種。
SUS410J1 410の耐食性をより向上させた高力鋼種。タービンブレード、高温用部品
SUS416 被削性が良く、ステンレス鋼中最良の鋼種。自動盤用
SUS420J1 焼入れ状態での硬さが高く、13Crより、耐食性が良好。タービンブレード
SUS420J2 420J1焼入れ状態での硬さが高い鋼種。刃物、ノズル、弁座、バルブ、直尺
SUS420F 420J2の被削性改良鋼種。
SUS429J1 耐摩耗性と耐食性の必要な用途に適する。オートバイブレーキ、ディスクブレーキ
SUS431 Niを含むCr鋼、熱処理で高い機械的性質を持つ。410,430より耐食性が良い
SUS440A 焼入れ硬化性に優れ、硬く、440B、440C、よりじん性が大きい。刃物、ゲージ、ベアリング
SUS440B 440Aより硬く、440Cよりじん性が大きい。刃物、弁
SUS440C すべてのステンレス鋼、耐熱鋼中最高の硬さを持つ。ノズル、ベアリング
SUS440F 440Cの被削性を向上した鋼種。自動盤用
SUS630 Cuの添加で析出硬化性を持たせた鋼種。シャフト類、タービン部品
SUS631 Alの添加で析出硬化性を持たせた鋼種。スプリング、ワッシャー、計器部品
SUS631J1 631の伸線加工性を向上させた鋼種。線用、スプリングワイアー
SUH31 1150℃以下の耐酸化用。ガソリン及びディーゼルエンジン用排気弁
SUH35 高温強度を主としたガソリン及びディーゼルエンジン用排気弁
SUH36 高温強度を主としたガソリン及びディーゼルエンジン用排気弁
SUH37 耐酸化性を主としたガソリン及びディーゼルエンジン用排気弁
SUH38 ガソリン及びディーゼルエンジン用排気弁、耐熱ボルト
SUH309 980℃までの繰り返し加熱に耐える耐酸化鋼。加熱炉部品、重油バーナー
SUH310 1035℃までの繰り返し加熱に耐える耐酸化鋼。炉部品、ノズル、燃焼室
SUH330 耐浸炭窒化性が大きい。1035℃までの繰り返し加熱、炉材、石油分解装置
SUH660 700℃までのタービンローター、ボルト、ブレード、シャフト
SUH661 750℃までのタービンローター、ボルト、ブレード、シャフト
SUH21 耐酸化性が優れた電熱材料。自動車排ガス浄化装置材料
SUH409 自動車排ガス浄化装置材料、マフラー等
SUH446 高温腐食に強く1082℃まで、剥離しやすいスケールの発生はない。燃焼室
SUH1 750℃までの耐酸化用、ガソリン及びディーゼルエンジン用吸気弁、バーナーノズル
SUH3 高級吸気弁、低級排気弁、魚雷、ロケット部品、予燃焼室
SUH4 耐摩耗性を主とした吸気排気弁、弁座
SUH11 750℃までの耐酸化用、ガソリン及びディーゼルエンジン用吸気弁、バーナーノズル
SUH600 蒸気タービンブレード、ディスク、ローターシャフト、ボルト
SUH616 高温構造部品、蒸気タービンブレード、ディスク、ローターシャフト、ボルト


鋼種系 トピック 複合硬化処理後
の表面硬度Hv
オーステナイト系 オーステナイト系のステンレスは耐食性が高く酸に対しての腐食性も強いので機械の恒久部品やボルト、リベットから、原子力発電で使われる冷却水のパイプまでその用途の多さと信頼性は抜群です。しかしながら、焼入れ処理が入らず、また窒化処理もε層が非常に広範囲で発生してしまう為に現実的には実用化されておりませんでした。 1400〜1600
(HRC74〜77)
オーステナイト
フェライト系
オーステナイトフェライト系のステンレスは、2相組織を持ち、耐酸性、耐孔食性に優れている為、悪環境での使用が多い鋼種です。特に海水を用いるプラントや原子力発電所の二次冷却のシステムには無くてはならないものとなっております。 1400〜1600
(HRC74〜77)
フェライト系 熱の大きな変化に対しての繰り返しストレスに強いので、特に熱を利用する機器での使用が一般的です。温水漕や厨房機器、苛性ソーダ製造プラント、ハロゲンイオン下での使用などに適しています。 1400〜1600
(HRC74〜77)
マルテンサイト系 焼入れ硬化性が優れているので耐摩耗製品に多く使われていました。特に刃物、ブレーキディスク、バルブ、弁座、ベアリング、タービンブレード、消耗生産財などにも多く使われております。しかし、磁石にもつくように、耐食性があまり良くない為、取り扱いや、使用環境には細心の注意も必要でした。 900〜1600
(HRC67〜77)
析出硬化系 CuやAlの添加で析出硬化特性を持たせた鋼種です。耐熱性も高い為、ガスタービンコンプレッサーブレードやガスタービンエンジンの部品など用途は広くありませんが、ダイヤフラムやファスナーなど身近に使われてもいる鋼種です。 1400〜1600
(HRC74〜77)